【前編】汗と食べ物・第1回汗はもともと無臭――においを決めるのは何か

「汗くさい」という言葉があります。しかし汗そのものは、出た直後はほとんどにおいません。

においが生まれる仕組みと、食べ物との関係を2回に分けて取り上げます。

この記事の要点

  • 出たばかりの汗は、ほとんどにおわない
  • においは、皮膚の常在菌が汗や皮脂の成分を分解して生まれる
  • 食べ物がにおいに関わる経路は、大きく3つ
  • ニンニクの成分が皮膚から出ることは、実際に測定されている

汗には2種類ある

汗腺場所成分におい
エクリン腺ほぼ全身約99%が水。ほかに塩分、アミノ酸、尿素など出た直後はほぼ無臭
アポクリン腺わき、耳の中など水のほか、
たんぱく質や脂質を含む
においのもとになりやすい

運動や暑さでかくさらさらした汗は、大部分がです。にもかかわらずにおう理由は、汗そのものではなく皮膚にすむ菌にあります。

においが生まれる流れ

  1. 汗が皮膚の表面に出る(この時点ではほぼ無臭)
  2. 皮膚の常在菌が、汗や皮脂に含まれる成分を分解する
  3. 分解によって、においを持つ物質に変わる
分解されるもの生まれる物質におい
アミノ酸、脂肪酸酢酸、イソ吉草酸などすっぱい、蒸れたにおい
尿素アンモニアつんとしたにおい

汗のにおいとは、菌が汗や皮脂の成分を分解した後に残る物質といえます。汗を放置する時間が長いほどにおいが強くなる理由も、同じ仕組みです。

食べ物がにおいに関わる3つの道すじ

道すじ1:成分が血液に入り、皮膚から出る

代表例はニンニクです。日本で行われた研究では、焼きニンニク約45gを食べた後、前腕の皮膚表面からニンニク由来の成分が実際に検出されました。

成分ピークの時点8時間後
ジアリルジスルフィド摂取直後摂取前の値を上回る
アリルメチルスルフィド摂取の30分後摂取前の値を上回る

皮膚から出るにおいは、少なくとも8時間続いていた計算になります。血液を通って全身から放散されるため、歯みがきやマウスウォッシュでは対応できません

呼気を測定した別の研究では、多くの成分が2〜3時間でもとの値に戻る一方、アリルメチルスルフィドだけは30時間後も高い値を保っていたと報告されています。

道すじ2:腸内でにおい物質がつくられる

動物性のたんぱく質や脂質を多く摂ると、の中でアンモニアや硫化水素などのにおい物質がつくられ、血液を通じて汗や皮脂に混ざると説明されています。

疲れたときや肉が続いたときに感じる、尿のようなアンモニア臭は「疲労臭」と呼ばれることがあります。学術用語ではなく、一般向けに使われる通称です。

道すじ3:皮脂の量や酸化の度合いが変わる

皮脂が酸化してできる2-ノネナールは、加齢に伴う体臭の一因とされています。脂質の摂り方や、体の酸化のしやすさが関わる部分です。

次回にお伝えすること

食べ物が汗のにおいに影響することは、複数の研究で確認されています。ただし「肉を食べるとにおう」といった単純な話ではありません。

研究によって結果が食い違う部分もあります。第2回では、実際に行われた研究の内容と、日々の食事で何をどう摂ればよいかを取り上げます。

参考
Sato S, Sekine Y, Kakumu Y, Hiramoto T.「Measurement of diallyl disulfide and allyl methyl sulfide emanating from human skin surface and influence of ingestion of grilled garlic」Scientific Reports 10:465(2020)/Taucher J ほか, J. Agric. Food Chem. 44:3778-3782(1996)/関根嘉香「皮膚ガス測定は何に役立つか?」におい・かおり環境学会誌 48(6)(2017)/資生堂dプログラム「汗とニオイ対策」(皮膚科医監修)/第一三共ヘルスケア「体臭の症状・原因」

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