「油を控えましょう」という言葉を、健康の話とはまったく違う場所で聞いたことがあるでしょうか。東京都下水道局は生活インフラを守る目的でこの言葉を用いています。同じ「油を控える」という言葉が、こんなにも異なる立場から語られている——今回は、その2つの視点を紹介しながら、栄養について少し違う角度から考えてみたいと思います。
健康は、実は社会にも貢献している
健康管理は、自分自身のためだけのものと思われがちですが、実は社会全体にも関わっています。その一例が、生活習慣病の予防を目的とした特定健診・特定保健指導、いわゆる「メタボ健診」の仕組みです。生活習慣病が進行すると医療費や介護にかかる費用が増える傾向があり、個人の健康管理が結果的に社会全体のコストにも影響するという構造があります。
つまり、一人ひとりが自分の健康づくりに取り組むことは、私生活の充実だけでなく、社会が支え合うための土台にもなっている、という見方ができます。
もう一つの「油を控える」――東京都下水道局の取り組み
健康づくりとは別の文脈で「油」に注目している存在があります。東京都下水道局です。同局では「油・断・快適!下水道」という取り組みを通じて、飲食店に対してグリース阻集器(グリーストラップ)の設置と適正な維持管理を呼びかけています。
排水中の油脂分は、河川や東京湾の水質を悪化させたり、下水道管の詰まりを引き起こしたりする原因になるとされています。家庭向けにも、使用済みの食用油を排水口にそのまま流さず、拭き取ってから捨てるようにという案内がなされています。
これは健康のための指導ではなく、あくまで生活インフラと環境を守るための呼びかけです。ただ、「油」という同じキーワードが、これほど異なる目的で語られていることに、まず面白さを感じます。
私たちの生活でできること
この2つの視点は、実は私たちの日々の行動でつながる部分があります。揚げ物や炒め物で使った油を、排水口に流さず拭き取ってから処分することは、インフラや環境への配慮につながる行動です。
そしてこの機会に、揚げ物や炒め物など油を多く使う調理の頻度そのものを見直してみるのも一つの方法です。日々の油の摂取量を見直すことは、血液検査における脂質の数値(LDLコレステロールや中性脂肪など)や、生活習慣病のリスクとも関わりがあるとされています。環境のためだけでなく、自分の体にとってもプラスに働く可能性がある、という点は覚えておいて損はないかもしれません。
視点を変えると、別の分野が見えてくる
今回取り上げたのは、「油を控える」という一つの言葉が、健康と生活インフラという異なる分野で、それぞれの目的のために使われているという話でした。栄養や健康について考えることは、体のことだけにとどまらず、社会や環境といった別の分野への入り口にもなり得ます。
普段何気なく使っている言葉も、少し視点を変えてみると、思いがけないつながりが見えてくることがあります。今回の話が、そんな気づきの一つになれば嬉しいです。
参考
東京都下水道局「油・断・快適!下水道」

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