低体重を考える(全3回)|第1回
「やせ=健康」ではない——若い方と高齢の方の「やせ」は、まるで別物
「太っているより、やせているほうが安心」。そう感じている方は少なくないと思います。けれど「やせ」をひとくくりにすると、大事なことを見落とします。同じBMI18.5未満という数字でも、若い方と高齢の方とでは、その意味がほとんど正反対だからです。
前回まで、BMIは体格を測る数字であって、体の中身(筋肉や脂肪、その人の状態)までは映さない、という話をしてきました。その続きとして今回は、「やせ」という同じラベルが、世代によって全く違う出来事を指している、という点を掘り下げます。
同じ「やせ」でも、入り口が正反対
低体重(ここではBMI18.5未満を目安とします)には、大きく分けて二つのタイプがあります。原因の方向がまるで違うので、分けて考える必要があります。 若い世代のやせ 高齢世代のやせ ▼ 多くは「能動的」 ▼ 多くは「受動的」 やせたい気持ち ダイエット行動 体型の思い込み 食事を減らす選択 食欲の低下 かむ・飲み込む力の衰え 病気・お薬の影響 ひとりの食事・気分の落ち込み → 本人は「成功」と感じることも → 体からの「危険サイン」のことも
若い世代のやせは、その多くが本人の選んだ行動から始まります。やせたいという気持ち、ダイエット、そして「自分は太っている」という思い込み。ここが厄介なところで、体重が落ちることを本人は「うまくいっている」と受け止めていることさえあります。
一方、高齢世代のやせは、ほとんどが受け身で起こります。食欲が落ちる、かむ力・飲み込む力が衰える、病気やお薬の影響、ひとりの食事が続いて食が細る——こうした背景があって、結果として体重が減っていく。こちらは本人が望んだわけではなく、むしろ体が出している注意のサインであることが少なくありません。筋肉が落ちて弱っていく「フレイル」や「サルコペニア」と呼ばれる状態とも、地続きの問題です。
分けて考えないと、対応が真逆になる
なぜわざわざ分けるのか。それは、目指す方向が正反対になるからです。
高齢世代のやせは「いかにエネルギーとたんぱく質を確保するか」という足し算が課題になります。一方、若い世代のやせは「足りないから増やそう」という単純な話ではなく、まず「やせを良しとする思い込みや、やせを煽る情報といったん距離を取り、自分の体格を正しく捉え直す」ことが出発点になります。同じ低体重という数字を見て、片方には食べてもらい、片方には立ち止まってもらう。数字だけを見て一律に「やせ=要注意」とも「やせ=健康」とも言えないのは、このためです。
BMIという一つの物差しを、文脈なしで読むことの危うさが、ここにはっきり表れます。「18.5未満」という同じ目盛りが、ある人にとっては病気の影、別の人にとっては避けられたはずのリスクを指している。数字は出発点であって、結論ではありません。
あなたのやせは、どちら側?
現実はもう少し複雑です。中年世代は両方の要素が混ざり合うグレーゾーンになりやすく、若年世代も、やせたい気持ちを伴わずに食べられなくなるタイプ(回避・制限性食物摂取症など)や、病気が背景にある低体重もあります。高齢の方の中にも、若い頃からの低体重をそのまま持ち越している方がいます。だからこそ「自分のやせは、どの入り口から来ているのか」を一度立ち止まって考えることに意味があります。
もしあなたが若い世代で、「もっとやせたい」「自分はまだ太っている」という気持ちが出発点にあるなら——次回は、その感覚そのものを少していねいに見ていきます。日本の若い女性の「やせ」が、実は世界的にもかなり特殊な状況にあること、そしてその多くが”思い込み“から始まっていることを、データから確かめます。
📄 次回(第2回)
20〜30代女性の5人に1人が「やせ」。その多くは”思い込み”から始まる
数字で見る、若い女性のやせの実態と、体型の思い込みについて。
📝 この記事のまとめ
- 同じBMI18.5未満でも、若い世代と高齢世代では原因の方向が正反対
- 若い世代のやせは「能動的」(やせ願望・ダイエット・体型の思い込み)が多い
- 高齢世代のやせは「受動的」(食欲低下・かむ力の衰え・病気・孤食)が多く、体の危険サインのことも
- 対応の方向が真逆になるため、やせを一律に評価することはできない
- BMIは出発点であって、結論ではない
参考:厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査」/国立精神・神経医療研究センター「摂食障害情報ポータルサイト」「こころの情報サイト」/厚生労働省 e-ヘルスネット「フレイル」「若い女性のやせと健康・栄養問題」

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