夏の疲れが気になる時期ですが、体の数値が大きく動くのはこれからです。糖尿病の治療指標であるHbA1cには季節変動があり、上昇が始まるのは秋以降になります。
この記事の要点
- HbA1cは2〜3月に最も高く、7〜9月に最も低い
- 冬と夏の差は0.2〜0.3%程度
- 食事内容だけでは説明がつかず、活動量の低下も関与
- 10月は、半年かけて数値が動く期間の起点
国内データが示す変動
東京女子医科大学の報告では、糖尿病患者2,511名のHbA1cを月別に平均すると、明瞭な曲線が現れました。
| 時期 | HbA1c |
|---|---|
| 2〜3月 | 年間で最も高い |
| 7〜9月 | 年間で最も低い |
| 冬と夏の差 | 0.2〜0.3% |
より大規模な検証として、全国の診療所から登録された2型糖尿病患者のデータを解析した研究があります。24か月にわたり定期的に検査を受けた4,678名を対象とした解析では、HbA1cだけでなく血圧とLDLコレステロールも季節変動し、冬季に管理目標の達成率が下がることが示されました。
複数の指標が同じ方向に動く点は、季節が生活全体に影響していることを示しています。
0.2〜0.3%の差をどう受け取るか
個人の検査結果として見れば、0.2〜0.3%は小さな幅です。測定の誤差と区別がつかない場合もあります。
一方で、集団を平均した数値が毎年同じ時期に同じ方向へ動く点には意味があります。偶然のばらつきではなく、季節に伴う生活の変化が反映されていると考えられるためです。
健診の結果を前年と比べる際にも、受診した時期が異なれば、季節の影響が含まれている可能性を踏まえて眺める必要があります。
食事だけでは説明がつかない
秋冬に糖質の多い食品や行事食が増えることは、上昇の理由として想像しやすい点です。しかし、データを丁寧に見ると、食事内容だけでは説明がつきません。
仮に食生活の乱れが主因であれば、お盆を挟む8〜9月にも上昇が見られるはずです。実際には、8〜9月は上昇するどころか年間で最も低い時期にあたります。
考えられる要因は次のとおりです。
- 寒さによる外出機会と活動量の低下
- 日照時間の減少
- 夏場の食欲低下や代謝の変化
機序は完全には解明されていません。また近年は、治療の進歩などにより変動幅が縮小傾向にあるとも指摘されています。
10月からの半年をどう過ごすか
季節変動を踏まえると、10月は結果を振り返る時期ではなく、これから動く期間の入り口にあたります。
- 気温が下がっても、体を動かす習慣を途切れさせない
- 年末年始を迎える前に、体重と食事の記録を一度整える
- 冬の健診結果には季節要因が含まれると知っておく
食事の内容を見直すことに加えて、活動量が落ちていないかを同時に確認する視点が有効です。日々の歩数や外出の回数は、気温が下がるにつれて自覚のないまま減っていきます。
秋のうちに、天候に左右されにくい運動の手段を一つ用意しておくと、冬の落ち込みを緩やかにできます。
注意しておきたい点
季節変動が確認されているのは、あくまで血糖や血圧といった検査値です。肌の状態や体内の老化に関わる指標が季節で変動することを示した研究は、現時点では見当たりません。検査値の話として受け取っていただければと思います。
参考にした情報
- Sakura H, et al. Seasonal fluctuations of glycated hemoglobin levels in Japanese diabetic patients. Diabetes Res Clin Pract. 2010;88(1):65-70.
- Sakamoto M, et al. Seasonal Variations in the Achievement of Guideline Targets for HbA1c, Blood Pressure, and Cholesterol Among Patients With Type 2 Diabetes: A Nationwide Population-Based Study (ABC Study JDDM49). Diabetes Care. 2019.

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