「糖尿病の疑い」と言われたら——栄養の視点で、どう向き合うか|栄養のたね

糖尿病と栄養を考える

「糖尿病の疑い」と言われたら——栄養の視点で、どう向き合うか

健診で「血糖が高め」「糖尿病の疑い」と言われて、まず頭に浮かぶのは「何を食べたらいいのか」ではないでしょうか。いきなり”正解の献立”を探す前に、栄養の観点からみた考え方を知っておくと、向き合い方がずっと楽になります。「パーフェクト」な食事を一度作るよりも、「ベター」に続けられる考え方を身につけるほうが、結局は効くからです。

まず、血糖と食事の関係をざっくりつかむ

食事の中で食後の血糖を主に押し上げるのは、ごはんやパン、麺、いも、甘いものなどに含まれる「糖質」です。ここで誤解されやすいのですが、糖質は悪者ではありません。体や脳の大切なエネルギー源で、極端に抜けばいいというものでもない。問題になるのは、食後に血糖が一気に跳ね上がる「急上昇」です。

同じ量の糖質をとっても、食べ方によって、血糖の上がり方は急にも、なだらかにもなります。栄養の側からできることの多くは、この「上がり方をなだらかにする」工夫だと考えると、ぐっと見通しがよくなります。 血糖 食後の時間 → 急上昇 なだらか 早食い・糖質だけ先に 順番・繊維・よく噛む

「何を」より「どう食べるか」が効くこともある

食べるものを大きく変えるのは負担が大きいですが、「食べ方」の調整は、今日からでも始められます。血糖の急上昇をやわらげる方向として、よく知られているのは次のような工夫です。

①食べる順番を意識する

野菜・きのこ・海藻や、肉・魚・卵などのおかずを先に食べ、ごはんなどの糖質を後にまわすと、食後血糖の上がり方がゆるやかになりやすいことが報告されています。効果は中くらいで、全体の量や内容も大切ですが、手軽に試せる工夫です。

②ゆっくり、よく噛んで食べる

早食いは血糖を急上昇させやすく、食べすぎにもつながります。ひと口ずつ置く、よく噛む。それだけでも、上がり方と満腹感が変わります。

③欠食・まとめ食いを避け、規則的に

食事を抜いて空腹が続いたあとにドカ食いをすると、血糖は大きく振れます。規則正しい時間に、過不足なく食べるリズムが、振れ幅を抑えます。

④食物繊維を味方につける

野菜・海藻・きのこ・豆・全粒の穀物などに多い食物繊維、とくに水溶性の食物繊維は、糖の吸収をゆるやかにする働きがあります。「先に・しっかり」とりたい栄養素です。

どれも「我慢する」より「組み立てを変える」工夫だという点が大事です。糖尿病の食事というと、まず「禁止」を思い浮かべがちですが、向き合い方の出発点は、減らすことより整えることにあります。

「太っていないから大丈夫」は、日本人には通じにくい

もう一つ、当事者に知っておくべき大切な点があります。「自分は太っていないから糖尿病とは無縁」という思い込みは、日本人には当てはまりにくいということです。

日本人を含む東アジアの人々は、欧米の人々に比べて、もともとインスリンを出す力(膵臓の予備力)が弱い傾向があるとされています。そのため、欧米のように大きく太らなくても、やせ型・標準体型のまま血糖が上がってしまうことが珍しくありません。体型だけを見て安心するのではなく、体型に関わらず「食べ方を見直す意味がある」と捉えるのが、日本人にとっては現実的です。

これは連載の出発点で触れた「BMIや見た目の数字だけでは健康は語れない」という話と、地続きです。やせていても血糖は上がりうる。糖尿病は、体重という一つの物差しの外側でも進むのです。

「制限」ではなく、続けられる「調整」へ

意気込んで極端な糖質オフに走る方がいますが、つらい制限は長続きせず、反動で元に戻りやすいものです。栄養として向き合うコツは、ゼロか100かではなく、続けられる範囲で整えること。白米に雑穀や麦を混ぜる、間食の内容を変える、夜だけ主食を控えめにする——小さな調整を積み重ねるほうが、一度きりの完璧な献立より、ずっと体に効きます。

完璧でなくていい、という前提も大事です。一回食べすぎた日があっても、それで台無しになるわけではありません。長い目で見た平均が、血糖にも体にも反映されます。

「疑い」は、引き返せる相談の入り口

最後に、いちばん伝えたいことを。「疑い」と言われた今は、見方を変えれば”引き返せるかもしれない地点”です。糖尿病の予備群にあたる人数は、近年むしろ減り続けています。つまり、この段階でうまく向き合えた方が、たくさんいるということです。指摘されたことは、悪い知らせであると同時に、早く気がつけたチャンスでもあります。

ひとりで抱え込まないでください。 この記事は「考え方」をお伝えするものです。血糖の状態は人によって違い、すでに治療が必要な段階のこともあります。健診で指摘されたら、自己流の食事だけで様子を見ようとせず、まずは医療機関を受診し、必要に応じて管理栄養士による食事の相談を受けてください。あなたに合った具体的な進め方は、検査の数字を見ながら専門家と一緒に決めるのが、いちばん確実で安全です。

栄養の役割は、禁止のリストを増やすことではなく、自分の身体と食べ方の関係を理解して、続けられる形を見つける手伝いをすることだと思います。数字に振り回されるのではなく、その数字を手がかりに、自分のペースで向き合っていく。「疑い」と言われた今が、その第一歩になります。

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📝 この記事のまとめ

  • 食後血糖を主に上げるのは糖質。ただし糖質は悪者ではなく、問題は「急上昇」
  • 「何を」だけでなく「どう食べるか」——順番・よく噛む・規則性・食物繊維で上がり方をなだらかに
  • 日本人はやせ型でも糖尿病になりやすく、「太っていないから大丈夫」は通じにくい
  • 極端な制限より、続けられる小さな調整を積み重ねる
  • 「疑い」は引き返せる入り口。自己流で抱え込まず、受診と専門家への相談を

参考:厚生労働省「令和6年 国民健康・栄養調査」結果概要(2025年12月公表)/厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病」「食後高血糖」関連項目/日本糖尿病学会「糖尿病治療の手びき」等の一般向け解説/「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の診断・治療に代わるものではありません。

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