この記事の要点
- 摂食嚥下の2番目の段階が「準備期」。噛んで飲み込める形をつくる段階
- 噛むことは、砕く作業と、唾液と混ぜてまとめる作業の両方を指す
- あごを動かす筋肉は4つあり、いずれも三叉神経が動かしている
- 三叉神経は、筋肉を動かす役割と、口の中の感覚を受け取る役割の両方を担う
「食べる」に必要な「噛む」とは
前回は、食べる動作が口に入れる前から始まっていることを取り上げました。今回はその次の段階です。
食べる・飲むという一連の動きは、5つの段階に分けて整理されます。
| 段階 | 起きていること |
|---|---|
| 先行期 | 食べ物を見て認識し、食べ方を判断する |
| 準備期 | 噛んで、飲み込みやすいかたまりにする |
| 口腔期 | 舌でのどへ送り込む |
| 咽頭期 | のどを通過させ、気管に入らないようにする |
| 食道期 | 食道を通って胃へ運ぶ |
この記事で扱うのは、2番目の「準備期」です。
飲み込める形をつくる
噛むという動作は、食べ物を細かく砕くことだと考えられがちです。しかし準備期の役割は、それだけではありません。
歯で砕きながら、同時に唾液と混ぜ合わせ、ばらばらの状態からひとかたまりにまとめていきます。このかたまりを食塊と呼びます。まとまりのない状態のままではのどへ送れないため、この工程が欠かせません。
どの程度まで砕けたか、まとまってきたかは、口の中の感覚が判断しています。硬いものは自然と噛む回数が増えるのは、そのためです。
また、唾液に含まれるアミラーゼによって、でんぷんの分解もここで始まります。ご飯を噛み続けると甘みを感じるのは、この働きによるものです。
あごを動かしているのは三叉神経
噛むために働く筋肉は、次の4つです。
| 筋肉 | 主な働き |
|---|---|
| 咬筋 | あごを閉じる |
| 側頭筋 | あごを閉じる、引き戻す |
| 内側翼突筋 | あごを閉じる |
| 外側翼突筋 | あごを前に出す、左右に動かす |
この4つはいずれも、三叉神経の第3枝である下顎神経の支配を受けています。筋肉が動くには神経からの指令が必要であり、その指令を運んでいるのが三叉神経です。
三叉神経には、もうひとつ役割があります。顔や口の中の感覚を受け取ることです。噛んだときの硬さや食べ物の位置が分かるのは、この働きによります。
動かす役割と、感じ取る役割。噛むという動作は、この両方がそろって成り立っています。
まとめ
噛むことは、砕いてまとめる作業であり、神経と筋肉と感覚が同時に働く場面でもあります。
噛む力が落ちたり唾液が減ったりすると、食塊がまとまりません。その状態でのどへ送られると、誤嚥の危険が高まります。準備期は、その先の安全を左右する段階でもあります。
次回は、まとまった食塊をのどへ送り込む「口腔期」を取り上げます。

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