この記事の要点
- 変化の要因は感情ではなく、共に食事をする相手と頻度
- 関係の初期は摂取量が減る方向、女性でより一貫して観察
- 同居開始後は逆に体重が増える傾向、欧州の長期追跡研究で確認
- 分岐点は結婚という手続きではなく、同居という生活の変化
- いずれも観察研究であり、因果関係の断定はできない
関係の初期にみられる摂取量の低下
心理学には、他者からの見られ方を意識して食べ方が変わる現象を扱う研究群があります。印象管理と呼ばれる枠組みです。
1987年のMoriらの実験では、男女とも、望ましいと感じる異性が同席する場面で、そうでない相手との場面より摂取量が少なくなりました。
2009年のYoungらによるカフェテリアでの観察では、女性は異性と食事をする際に摂取エネルギーが低くなる一方、男性では同様の傾向がみられませんでした。
魅力度の高い男性が同席する場面で女性のジャンクフード摂取量が減る一方、男性側は相手の魅力度に左右されにくいという報告も重ねられています。
関係の初期は、量を控える方向、健康的に見える選択へ傾く方向に振れやすくなります。傾向は女性でより一貫して確認されています。
同居後に現れる逆方向の変化
交際が同居へ移ると、観察される方向が反転します。
| 研究 | 対象 | 主な結果 |
|---|---|---|
| Mata et al. 2018 | ドイツ 約2万人・16年間 | 同居は男女とも体重増加と関連。4年以上では結婚に伴う増加の約2倍 |
| pairfam | ドイツの縦断調査 | 女性は交際1年目に減少、同居移行後に増加。 男性は交際開始直後から増加 |
Mataらの研究では、年齢、子どもの有無、就業状況、ストレス、運動習慣、食習慣、喫煙を調整しても、体重増加が残りました。
研究者が具体例として挙げるのは朝食の変化です。単身時代は朝食を抜くか果物程度で済ませていた方が、同居後に一定量の朝食をとるようになる、といった日常の積み重ねが指摘されています。
分岐点は結婚ではなく同居
pairfamの分析では、非婚同居から結婚への移行そのものには、体重に対する有意な効果がみられませんでした。
変化を生むのは、届出という手続きではなく、同じ台所を使い、同じ食卓につく回数が増えるという生活の構造です。
別の説明として、mating market modelという枠組みも提示されています。関係が安定すると、外見を維持する動機が下がるという考え方です。
研究を読むうえでの留保
- 観察研究とパネル研究が中心。恋愛が体重変化を引き起こすと断定はできない
- 体重研究の多くはドイツと米国のデータ。外食・中食の比率が異なる日本への外挿には慎重さが必要
- 印象管理の実験は大学生を対象とした小規模研究が多い
食べ方が変わること自体は、避けるべき事態ではありません。食卓を囲む回数が増えることは、朝食習慣の定着など、望ましい方向にも働きます。
仕組みを知っておくと、体重や体調の変化に気づいたときに、原因を意志の強さに求めずに済みます。次回は、交際と同居で食費がどう動くかを家計調査のデータから整理します。
参考文献
Mori D, Chaiken S, Pliner P. (1987) Journal of Personality and Social Psychology
Young ME, et al. (2009) Appetite
Mata J, Richter D, Schneider T, Hertwig R. (2018) Health Psychology 37:948
Klein T. (2018) pairfam分析/ドイツ縦断データ

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