「夜に食べると太る」「たんぱく質は一度に30gしか吸収されない」——よく耳にするこれらの話、どこまで本当なのでしょうか。今回は脂質とたんぱく質の吸収率に焦点を当て、体の中で何が起きているかをわかりやすく解説します。
吸収率とは何か
「吸収率」とは、食べたもののうち小腸から体内に取り込まれる割合のことです。100g食べて95g吸収されれば吸収率は95%ということになります。
実は、脂質もたんぱく質も、吸収率そのものはタイミングによってほとんど変わりません。朝に食べても夜に食べても、消化管が取り込む割合は安定しています。
通常の食事での吸収率の目安
脂質
約95%
たんぱく質
約90〜95%
※食品の種類や調理法により多少前後します
脂質の吸収率:なぜタイミングに左右されないのか
脂質は胃から小腸へと送られ、胆汁酸とリパーゼという消化酵素によって分解・吸収されます。一度に多く食べると、胃の内容物を送り出すスピード(胃排出速度)が自動的に遅くなり、吸収が「分散」されます。
つまり体には、吸収率を一定に保つための自動調節機能が備わっているのです。
ポイント 朝に10g食べても夜に30g食べても、脂質として吸収される割合はほぼ変わりません。「入口(吸収)は同じ」と覚えておきましょう。
では「夜に食べると太る」は嘘?
吸収率は変わらなくても、吸収されたあとの「行き先」が変わります。
夜間(特に22時〜深夜2時頃)は、脂肪細胞の働きを調節する「BMAL1(ビーマルワン)」という時計遺伝子の活性が高まります。時間栄養学の研究では、この時間帯の脂質は脂肪として蓄えられやすいことが示されています。
ただしこの影響は糖質に比べると小さいのが実情です。脂質はインスリンをほとんど刺激しないため、糖質のように「血糖値の急上昇→大量のインスリン→脂肪合成」というルートが起きにくい構造になっています。
たんぱく質の吸収率:「30gの壁」は本当か
「たんぱく質は一食30gしか吸収されない」という話を聞いたことがある方も多いと思います。これは現在ではほぼ否定されています。
脂質と同様に、消化管の通過速度が調節されることで、大量に摂っても時間をかけてしっかり吸収されることがわかっています。
吸収率
タイミングに左右されない
- 一食30g以上でも吸収される
- 消化管の通過速度が自動調節
- 食べた時間帯による差もほぼなし
筋合成への利用
タイミング・量が関係する
- 一食20〜40g程度が筋合成に効果的
- 運動後は合成感受性が高まる
- 1日を通じた均等な分散が重要
ただし「吸収される」ことと「筋肉の合成に使われる」ことは別の話です。一度に大量に摂ると吸収はされますが、筋肉づくりに効率よく使われるかどうかは別問題です。
脂質とたんぱく質、タイミングで何が変わるのか
| 比較の視点 | 脂質 | たんぱく質 |
|---|---|---|
| 吸収率のタイミング依存 | ほぼなし 共通 | ほぼなし 共通 |
| 脂肪になりやすさ | 夜間はやや高い 差あり | 極めて低い |
| タイミングの主な影響 | 脂肪蓄積リスク(小) | 筋合成の効率 |
| 実践での優先事項 | 1日の総量・脂肪酸の質 | 1日の総量・均等な分散 |
覚えておきたいこと 吸収率はどちらも「入口」であり、タイミングによる差はほとんどありません。タイミングが影響するのは「吸収されたあとの行き先」。脂質は脂肪蓄積リスクとして、たんぱく質は筋合成の効率として、それぞれ異なる形で現れます。
まとめ
「夜に食べると吸収率が上がる」「たんぱく質は一度に30gしか吸収されない」——これらはいずれも科学的に正確とは言えません。
吸収率そのものは、脂質・たんぱく質ともにタイミングに大きく左右されず、体の自動調節機能によって安定しています。
タイミングが影響するのは、あくまでも「吸収されたあとの代謝」の部分です。そしてその影響も、1日全体の摂取量や栄養の質と比べれば、多くの場合それほど大きくありません。
まずは「何をどれだけ食べるか」を整えることが、健康づくりの確かな一歩になります。
※本記事は一般的な栄養学の知見をもとに作成しています。特定の疾患がある方や医療的な栄養管理が必要な方は、かかりつけの医師・専門家にご相談ください。


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